ウィンズロー邸は1893年、ライトが個人事務所を開設して最初の仕事です。
ライト自邸に程近いシカゴ近郊の草原地帯に建てられました。
大地に直接フーチングを乗せたような土台石（ライトはウォーターテーブルと呼んだ）から生えるように積まれたローマンブリックの外壁の上に白い額縁を挟んでテラコッタ製のフリーズ（浮き彫りの彫刻）が施されています。
(写真①)

軒の深い緩やかな寄棟屋根を持つシンプルなシルエットと水平に伸びる美しいシンメトリーのファサードは、絶妙のプロポーションで実現されていて、100年以上経った今でも斬新で美しい建物になっています。
正面のこの外観とは別に、この住宅にはもう一つの表情があります。
(写真②)

車寄せのアーチをくぐり庭に回り込むと一変して高く煉瓦を積み上げた八角形の階段塔を持つ重厚で複雑な顔を見せてくれます。
ライトの計画では車寄せとバランスをとるように反対側に渡り廊下でつながった八角形のパビリオンがあったのですが、この部分は採用されなかったようです。

ライトは後年、自伝“A TESTAMENT”の中でこう書き残しています。
「ウィンズロー邸は私が自分で設計して建てた最初の建物である。それは、驚くほど新しく、魅力的なものとなった。―中略―　家は建てられてから40年後に、建築費の三倍以上の値で売られた。」

流行に左右されず、時代を超えて価値が認められることはまさに有機的建築の証明といえると思います。
現在は、個人所有のため残念ながら公開されていませんが、ライトの作品の中でもライトの思い入れの強い作品なのです。

Written by T.Y

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